四十歳を越えてマゾに目覚めてしまった女社長の告白
告白◎松平令子(仮名)
松平令子と申します。
地元の国立大から東京の大手コンサルに就職し、そこで十年働いておりました。私なりにやりがいを感じておりましたが、たまたま地方創生のプロジェクトに関わったことから、自分も郷里の産業に何かしら寄与したいという思いが強くなり、帰郷して小さなコンサル会社を起業いたしました。
総勢六名の小さな会社ですが、何とかやってこれたのは、大学の同窓生や周りの皆様のおかげです。地元に帰ってから知り合い、結婚した夫にもずいぶん助けてもらいました。
もう若くもないですし、こんな私が貴誌に投稿したら、読者の皆様が驚かれるかもしれません、私のSM調教の記録をご覧いただけたら大変うれしく思います。
理解できない奇行
投稿したものを含めて、写真や動画はすべて私が持っている機材で撮影したもので、自撮りしたものもあります。行為のお相手は夫ではないため、安全上の問題を考えて、自分でクラウド保管しています。
SMや露出などの嗜癖に縁がなかった私には、驚きの世界でした。それを知ることになったのは、偶然の出来事でした。
起業して数年後、少しずつクライアント様も増えた頃のことです。弊社の社員は全員女性なのですが、一人の社員・A子の勤務態度がおかしいのに気がついたのです。
コンサルの資質の高い社員で、勤務態度もA+だったのに、始業ギリギリの時間に出勤してきたり、外泊をしたのか前日と同じ服装だったり、トイレに立ったままいつまでも帰ってこなかったり――と、気になる行動が目につくようになりました。
このまま見過ごさないほうが良いと思い、ある日、トイレから戻らない彼女の様子を見に行きました。すると個室の一つに鍵がかかっていて、ドア前に立つと、中からうめくような声が聞こえました。
体調が悪いのだと思ってドアをノックしようとしましたが、その瞬間カシャカシャと機械音が聞こえてきたのです。ドアを叩きかけた手が宙で止まりました。何が起きているのかわからないまま、様子を見た方がいいと思い、トイレの外で彼女が出てくるのを待ちました。
五分後にトイレから出てきた彼女は私の顔を見ると凍りついたような表情になりました。やはり、何か後ろめたいことがあるのです。
「A子さん、ちょっといいですか」
と会議室を指すと、彼女は『はい』と答えたようでしたが、緊張のあまりか、声になっていません。
「トイレで何かスマホを操作していましたか? 機械音が聞こえたのだけれど」
と、単刀直入に聞きました。コンサルはクライアント様の機密情報をお預かりすることが日常で、中には世間に出したら倒産を招くようなものもあります。
スマホを見せてと求めると、彼女はポケットからスマホを出して、私の前に置きました。手が震えて、顔色は真っ青です。
「写真を撮っていましたね?」
「はい……」
「見てもいいですか?」
と問うと、彼女はうなずいて、それから目を閉じて息を止めたように見えました。写真フォルダーに入っていた写真は、私の想像とは全くかけ離れたもので、唖然としました。
それは自撮り写真でした。彼女は放尿している自分を自撮りしていたのです。腰掛けた便座の上に両足のかかとを乗せて開脚し、放尿の様子を撮った写真、スカートをめくってパンツを見せている写真、パンツの前が卵型にふくらんでいて、何か入れているのがわかる写真……。
私には全く意味のわからない写真ばかりでしたが、セルフポルノと呼ばれるものであることは明白で、必要以上に私が見ると、逆に私がセクシャルハラスメントになってしまいます。
クライアント様のデータなどを撮影していたのではなくてよかった、と思いました。機密保持契約違反は刑事訴訟に発展することもある深刻な事案ですが、これはただの服務時間規定違反です。ただし、撮った写真を販売等していた場合はまた別の問題なので、用途を聞かなければなりませんでした。
「これは、誰かに言われて撮ったのですか?」
と、聞くとうなずいたので、さらに質問します。
「恋人ですか?」
「いいえ……ご主人様……です」
「撮った写真はどうするんですか?」
「ご主人様に……送ります」
私は間抜けなぐらいぽかんとした顔になったと思います。彼女の言っている言葉の意味がわからなかったのです。
「ごめんなさい、よくわからない。その……人は、これまでもこういうことを求めてきたんですか?」
「はい……そうです」
彼女は本当につらそうで、消え入りそうな声で答えています。強制されて、はしたないポーズで自撮りをさせられ、男に送っている――そんなことを上司に話すなんて、とんでもない恥辱にちがいありません。
でも、彼女は私に助けてほしいと言っているわけではなく、いやでたまらなかったとも言いませんでした。性被害に遭っているという感じはありません。
「とにかく、勤務中にその……社外の特別な関係の人に写真を撮って送るのは、服務規程違反ですから、二度とやらないでください」
「すみません、反省しています」
彼女は深くうなずき、スマホは返しましたが、自撮り写真を「ご主人様」なる人に送ることはやめないんだろうな、自宅で撮って送るんだろうな、と思いました。
何がうれしくて彼女がそんなことをしているのか、私にはわかりませんでした。ただ、それが性的な行動だということには間違いなくて、同時に四十を過ぎた私にも、まだ知らない世界があるらしい、ということは理解できました。
この続きは、マニア倶楽部2025年1月号をご覧ください。