三面鏡の前で哀れな自縛をくり返していた私は無慈悲な緊縛凌辱に憧れているのです。
告白:千佳(仮名)
三面鏡遊び
千佳は鏡の大好きな子でした。母の話では、二歳になったばかりの頃、すでに祖母のお部屋の鏡台で、お化粧遊びしていたおしゃまさんだったそうです。
確かに千佳の記憶の中にも、そんな幼い頃の情景がぼんやり残ってはいるのですが、お化粧遊びはじつはあるごまかしの口実にすぎなかったのです。
祖母は千佳が生まれる前年に亡くなっていますが、両親にとっては思い出の詰まった部屋だったので、そのままにしていました。
祖母の鏡台は、正座して使う古いタイプの三面鏡でしたが、千佳は正面に映る自分の姿ではなく、両端の鏡に映り込んだ横顔の自分が不思議で、とてもワクワクしていました。
自分と視線の合わない横顔の自分を見ていると、自分なのに他人をコッソリと見ているようで、魅せられていたのです。
原因や理由は自分でもわかりませんが、気がついたときにはその三面鏡の前で自分を縛り、その視線の合わない自分の横顔を眺め、いつまでも見入っていました。
悪者に捕えられたかわいそうなお姫さまイメージだったかと思いますが、そんな姿や表情を見ていると、自分が第三者的に覗いているにもかかわらず、同時に主人公のお姫さまを体感していて、現実と空想の区別がつかなくなる曖昧さと、その謎めいた感覚がたまらなく好きだったのです。
お化粧は、あくまでもお姫さまらしさを出すための幼い工夫にすぎなくて、三面鏡に映る、紐で縛られた手や足、サルグツワ縛りの口、スカートの裾から投げ出された太腿……そういう自分のパーツを他人の目で覗き見るのです。
母が来たときには、あわてて縛っている紐ははずしていましたから、幼いながらにもこの三面鏡遊びに罪悪感というか、親にも知られてはならない恥ずかしい秘密の自覚はあったのだと思います。
もっとも学齢期前だと、縛りかたも稚拙だったと思うので、母は紐が畳に転がっていても、千佳のお化粧のほうにしか注意が向かなかったのかもしれません。
続きは本誌をご覧ください。
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